レッジョ・エミリアの保育園は、建築から美にこだわって造られている(インタビュー・レポート)

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レッジョ・エミリアの保育園を回っているときに、日本語の通訳さんが同行しているタイミングで、一緒に保育園を見学することができたという、嬉しい出来事があり、そこでのレポートを載せたいと思います。

 

保育園名:Nido Giulia Maramotti(ニード・ジュリア・マラモッティ)
対象:3ヶ月〜3歳:78名
設立:2008年〜
運営:パンタレーネ(協同組合

ペタゴジスタ:フランチェスカ
先生:ダニエラ
保育園を設計した建築家:カルロ・ロマンジ(http://www.lapisproject.net


<保育園の構造(建築関係)>
保育園の入り口は、わざと北側に設置をした造りになっており、暗くて、少し不快を与えるようにしている。南から光が差す構造を利用して、保育園内は明るく、ガラス張りになっていることで、庭も見えるようになっている。初めは不快なのだが、中に入ると、明るくなり、感情に働きかけるデザインにすることで、子どもも、大人も、自ら持っている、中身の子どもの部分が(おそらく無垢で、純粋な好奇心のことを表現しているのかもしれない)外へと解き放たれる構造にしている。

中に入ると、すぐにピアッツァ(広場)が広がり、天井からも、正面に広がっている庭からも、光が射す構造になっているので、エネルギーが集中している場所とも言える。入ってすぐ横に、キッチンも設置され、ガラス張りのデザインになっていることで、作っているところが見えるようにしている。キッチンもアトリエのひとつであると考えることができるからである。乳児以外の子どもたちは、このピアッツァで食事もする。保護者も一緒に、キッチン内、キッチン外で、ワークショップ(野菜を使って触れ合ったり、ジュースにして飲んだりしているドキュメンテーションが貼られていた)をすることもある。

クラス同士は、仕切ることもできるが、仕切りを取ることもでき、全てのクラスがつながることもできる。

各クラスに階段があり、半分が滑り台のような設計になっている。鉄筋で造られているため、上り下りする度にバイブレーションが起こり、同時に、音が発生していることに気が付くことができたのだと言う。

階段の先には(2階)、お昼寝をするスペースが広がっている(すでにコットが敷かれている状態)。2階には、ちょっとしたガラス張りのスペースがあり、そこから下の様子が見えるようになっていることで、下の人と繋がることができるという、重要な役割を果たしている(建築家の人は「これは特別に教えますが」と、お茶目に教えてくれました)。

ゴシックモードと呼ばれるモードが存在しており、「住む」ことと「幸せ」が合わさっている言葉なのだとか。この、住むということが幸せを感じることができつ感覚は、5感のような存在として、大切にしたいと思って造っている。

庭(全、子どもが外に出ても十分余裕のある大きさ)と部屋との繋がりの部分は、太陽があたり過ぎないように、サンブロックが施されており、サンルーム(またはグリーンハウス)のような、内側と外側の中間のような空間があり、そこで遊ぶこともでき、アトリエのようにも使うこともでき、植物を育てることもできる。

0歳児のお部屋では、アトリエの部分にコットがセットされていて、その方が使い勝手がよく、子どもによって、朝寝る子がいたりするので、フレキシブルに使うことができる。食事も、部屋で済ませている(1歳、2歳はピアッツァで食べている)。0歳児の2階には、空間があり、現在は、光のアトリエとして利用している。

設計的には、1人に対して10㎡(基準としては7㎡)と余裕を持った造りになっているため、自由に遊ぶことが可能になっている。

保育園全体は、白を基調にしている造りになっており、白であることで、それぞれの場所の解釈へ(おそらく、色がついていると、その色として解釈をはじめてしまうかもしれないが、全ての部屋の色が、白であることで、色ではなく、場所として解釈することができると言いたいのではないかと思われる)と繋がっている。



<普段から保育園で子ども達と過ごしている先生の話>
この保育園にはアトリエリスタがいないので、必要なときは、協同組合に所属しているアトリエリスタを呼んで行っている(アトリエ(様々な道具が置いてある)は、各クラスに1つ設置されているが、他の場所もアトリエにすることができるように設計されている)。

庭には、畑が用意されており、3歳児が位置的な関係もあり、よく観察している。畑など、その他の植物の世話は、保護者や、祖父母、子ども、職員で分担して行っている(世話をするのは朝が多く、時間的な問題で、祖父母が多いというのが現状)。

庭に、滑り台などの遊具は置いていないというのが特徴で、自然を感じて、発見することができる環境になっている。環境の一角に、地下を感じることができるプロジェクトがあり、地面よりも、下に行くことができるようになっている(地面と言っても、コンクリートで補正されているため、地層を見ることはできない)。この場所だけ、木が密集している造りになっていて、陰ができる構造になっている(設立当初は、木が小さかったが現在は大きくなって陰ができるようになった)。

庭は、ガーデナーが専属で付いており、定期的に見にきて、点検してくれている。

子ども達は、毎朝、外に出て活動をしており、毎日出ることで、季節を感じ、違いに気付くことができる。雨の日でも、新たな発見があるので、意欲的に出ている。冬でも外に出るが、少人数で行っている。この庭が日常の活動拠点となっている。

保育園の周りは、緑豊かなので、様々な動物がやってくる。野うさぎ、キジなど入ってくる(実際に見学していた時も、キジがおり、野うさぎは、普段から公園にいるので珍しいことではない)。ノロジカもいるが、園には入ってこないのだそう。

現在、1歳児は、体を動かすプロジェクトを行っており、自然と体を動かすことができるモノを設置している(登りたくなる柔らかいクッションのようなモノが設置されている)。

給食の内容は、子どもによって異なっている。0歳児は成長によって分けられているし、ベジタリアンの子や、ヴィーガンの子などにも対応している。


<ペタゴジスタの話>
この保育園は、マラモッティーファウンデーション(財団)と、マックスマーラー(高級アパレル会社で、レッジョエミリアにあるマックスマーラーが、支店となっている)から資金援助をしてもらって設立された。この保育園には、まず、ペタゴジスタが必要ということで、フランチェスカが担当することになった。
建築デザインは、若い建築家達の活躍の場として、35歳以下の方達に設計の募集を行い、コンペをして決められた。たくさんの若者の中から、カルロが選ばれ、実際に建築する際には、ペタゴジスタのアイディアも含まれている。それから、この保育園が誰が運営するのか?という問題になり、レッジョエミリア市の持ち物ということに位置付けられるのだが、条件として、マックスマーラーの社員の子ども達をこちらの保育園に入れるということで同意(78名の定員中30名が社員の子ども達)。それから、市のための労働組合として、パンタレーネが運営をすることになり、2008年から保育園がスタートした。こちらの保育園は、3社によって成り立っている特殊な保育園となっている。

入園の仕方は、マックスマーラーの社員の方々以外は、コムーネ(市立)と同様の方法で、願書を出して行われる。

0〜3歳児までの受け入れで、1ヶ月540€(そのうち210€は市が負担している)、さらに所得によって、12レベルまで金額の設定がある。

登園時間は7:30〜9:00の間、基本は18:30までお預かり(延長の場合は別料金となっている/1ヶ月70€)。

給食は、市が考えたメニューに統一されている(つまり、全ての保育園が同じメニューをいただいているということになる)。乳児院のお医者さんと、栄養士によって考えられているメニューになっている。
このメニューの内容は、調理士の意見も反映されており、練りに練った内容となっている。このメニューをベースにして、0歳児は、成長に合わせた内容で提供され、さらには、家族からの意見も反映し、ヴィーガン、ベジタリアンの子にも反映されている。

質問:保育園を建設するにあたって大切なこととは?
建築と、ペタゴジスタの関係性ができてから、保育園という形ができる。保育園に必要なことは、大人と子どもの変化に合わせて、変えられる可動式であるということ。建物自体は、未完成の状態で、造りこんでいない、準備されていないということが重要である。
子どもたちが変わるたびに、子ども達がスペースを造っていける空間であること。様々な出来事が行うことができる空間で、オープンであること。オープンであることで、他の部屋で何をしているのかが、見える環境造りになっていることにより、子どもの好奇心を刺激することができる(子どもが集中している時には、オープンであることが気にならない)。それには、自由に遊ぶことができるスペースがあること。
そして、アトリエや、部屋以外の場所の、トイレや、キッチンなど、全て大切な場所であると考え、その全てが、美しくあることで、アイディアが浮かび、気持ちを豊かにしてくれる。これは特別なことではなく、全ての子どもにとって平等に与えられた権利である。建築は、ただの容器ではなく、考えが詰め込まれて、形になっているのである。
庭に滑り台などの遊具を置かないのは、他の公園と同じような設備にしてしまうのは意味がないと考えたからである。この空間の中で子ども達が感じたことを、全身を使って表現することができる空間であることが重要である。

質問:保育園でのケガ対応は?
保健所から抜き打ちで検査があり、安全性のミーティングが定期的に行われている。何人に対して、何人の配置になっているのかということや、小さなマテリアルなどの設置など。だが、安全性だけを求めて、子どもたちの可能性をゼロにしたくない。年齢によって、このマテリアルが合っていないと思われるモノに対しても、説明の仕方や、配置などによって、十分に安全に使うことができるので、意識の問題であると考えている(例えで、今まであった家に赤ちゃんがやって来た時には、家の中身を変えることはないということと一緒であると上げている)。

質問:プロジェクトの始まりはどのようにして行われるのか?
先生が子どもを見て、興味があるものから始めたりすることもあるが、先生がやりたいことから始めることもあり、フォログラフィア・エウロペア(街全体で行われている写真の祭典)のイベントに絡んで始めることもある。さらには、保護者の批判から始めたこともある。
重要なのは、どんな形であれ、保護者、先生同士が共有されていることである。
保護者の批判から始めたことについては、年齢にあっていない階段が設置されていること、そこにゲートを設置していないことであったり、保育園を基調としている白い壁などはどうなのか?など、様々な批判があった。
それに対して、私たちは、保護者の言うことを鵜呑みするのではなく、まずは、場所に対して、実際に子ども達がどのように活動するのかを見て、観察し(それがドキュメンテーションとして貼られていました)リサーチすることから始め、実際に何か行われているのかを見てきた。これ自体が、プロジェクトとなっている。
スペースに対して、まずは耳を傾けるこが、大切である。だが、これは簡単なことではない。
このプロジェクトを進めていくにつれ、私たちだけではなく、保護者たちまでもが、この保育園の「美」に気付くことができた。今でも、そのプロジェクトは進んでいる。すぐに答えが出るものではなく、そのために時間をかけて、見ていくことがドキュメントしていくことである(それを記録するのが、ドキュメンテーションである)。これは、子ども達が学ぶ時間でもあり、同時に私たち大人の学びでもあると言える。

 

 

 

以上になります。

日本とは異なり、建築の段階から、ペタゴジスタの方と念密に話をしてから、設計、そして、建設をしているので、保育をするための建物になっているということです。設計をしている時から、それぞれの想い、こだわりが、たくさん込められているのです。むしろ、こちらの方法は、自然な取り組みではないかと、個人的には思います。日本でも、このように取り組んでいるところが、あるかもしれませんが、少ないように思えます。

プロジェクトの始まりについてを、聞きたかったので、質問させていただいたのですが、今までで、一番しっくりとした回答をいただけたように思います。

 

通訳さんも素晴らしく、お食事をいただきながら、会話を進めるという、忙しい状態だったにも関わらず、分かりやすく訳してくれ、頭にスッと入ってきたので、感謝の気持ちでいっぱいです。その通訳さんは、お話を聞いて、本音で話してくれていると、感じていたようで、個人的にも、そう受け止めることができました。

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本になっている内容は、綺麗なコトしか書かれていないことが多いなと、個人的には思っていたので、とても不気味に思っていたのですが、今回は、リアルな話でしたので、本当に嬉しい見学、お話を聞かせていただきました。

 

改めて、生活をする環境も、人の哲学的な考え方も、美しくあるということが、子どもたちにとって、刺激となり、学びにつながっているということではないかと、感じることができました。

 

レッジョ・チルドレンに興味のある方にとって、少しでも参考になればという想いです。

 

 

おまけ

食育に力を入れている保育園ということもあって、その日、用意していただいたお食事はこちらです。

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この日の、子ども達といただいているメニューを、キレイに盛り付けておもてなししていただきました。

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いちごが入っているリゾットが、パリパリの器に盛られているので、食べやすくしてくれています。中心部分には、野菜が入った卵のオムレツ。

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クリームチーズを挟んだプチパン

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生ハムメロン(子ども達には出されていないと思います)

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サラダは、オリーブオイルとバスサミコ酢でいただき、パルミジャーノレッジャーノも塊でいただけます。

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微炭酸のキウイジュース

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